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その日は朝から灰色の雲が伊東市を覆っていた。風に乗った雨の匂いは瞬く間に次の雨を運んでくる。雲から落ちてくる水は横殴りで吹き荒らし、
会場から見渡す港に停船する船舶は、防波堤の内側にあるにも関わらず上下左右に揺れる。
すぐ近くに駐車する車の上に、今にも打ち上げられてしまうのではないか。そんな心配に襲われる。
2004年第3回キング・カラカウア・フラ・フェスティバル・ジャパンはそんな大雨の中で開催された。
我がHalau Hula Onaona ’O Ka Maileの演舞はプログラム第二部の一番目と終盤。
第一陣を切ったカネ・カヒコは観客の目線を引いた。一つ、また一つ舞台を踏んで成長をするカネ軍団。だが満足の色は全く見えない。
自分達が思っている程、完成度は低い。目指すのは観客の歓喜や興奮を得ることではなく、自分達が納得する表現力の向上である。
しかしながら、アンクルジョージナオペからの『Very Good』の一言は、僕等に新たなる自信を与えてくれる。
会場の内外の言葉が失われたのは第二部の終盤。ハウマナ達が演舞を披露し始めた瞬間から、そこに居た全ての人が沈黙を守った。 息を呑み込んだ。そこには確かに壮麗に、日本とハワイの心が入り混じっていた。彼女達の踊りは続く。
その体の動きだけでなく、全体の空気を変えるような想い。それぞれがそれぞれの想いを抱え、語り部になる。 目線のその先に情景を描き、観客一人一人がその光景を汲み取る。そこは言葉を必要としない世界になる。
ハワイ語であろうが日本語であろうが・・・。
踊り終えた頃には、外の大雨のことなど忘れていた。感情はその扉を開け放していた。
その奥に光る温もりが、人々に感動を与えていた。既に理由なんて必要ではなかった。頬に一筋の雨が流れていた。
頬を伝って漂うその香りは、会場の外で振り続ける雨の匂いを忘れさせてくれていた。
ロビーでの写真撮影が終了し、ハウマナ達の顔も安らいでいく。するとカマイレ先生に立ち寄ってくる女性が居た。
Halau Hula Onaona ’O Ka Maileの生徒ではなさそうだ。彼女はカマイレ先生に何か言葉をかけたい、でも言葉が上手く出てこない。
失われてしまった言葉の一組一組を紡ぎ合わせようとする。『感動して涙が出ました・・・』。
些細な一言ではあるが、その時の彼女にとっては感情の奥底からようやく引っ張り出してきた精一杯の言葉だった。
フェスティバルが終了しても、伊東市を襲撃する大雨は変わらずに降り続いていた。
そんな風にして第3回キング・カラカウア・フラ・フェスティバル・ジャパンは幕を閉じた。
参加した皆様、大雨の中お疲れ様でした☆ m(_ _)m |